再会

Canon LiDE 500F

今、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムでは、スコットランド国立美術館展を開催中だ。(12月25日まで)
スコットランド国立美術館の展示会といえば、12年前伊勢丹美術館で開催したものが忘れられない。
個人的には、あの展示会の質の高さと趣味の良さが強く印象に残っている。
特にミレイの「優しき目は常に変わらず」、ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」、サージェントの「ロックノーのレディー・アグニュー」がまとめて掛かったコーナーは圧巻で、しばらくは金縛りにかかって、身動きすらできなかった。
中でもサージェントの「レディー・アグニュー」には目を奪われた。
顔を中心に周辺まで丹念に描きながら、スカートの裾は驚くほど大胆に描き流している。
まさに画家のセンスが伺われる肖像画だった。

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「ロックノーのレディー・アグニュー」
ジョン・シンガー・サージェント(1856-1925)
ロンドン上流社会における第一級の肖像画家としてサージェントの名前を高めた傑作。
この作品を見たロダンは、サージェントを「我らが時代のヴァン・ダイク」と呼んで賞賛した。
モデルのレディー・アグニュー・ガートルードは、ゴーラン・チャールズ・ヴァーノン伯の娘で1889年、法廷弁護士アンドリューと結婚し、3年後サージェントのモデルとなった。
肖像画の成功で画家が有名になると共にレディー・アグニューも社交界の華となったが、子供には恵まれず1932年に没した。
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果たして今回はどんな絵が出品されているのか?
展示会ポスターにも選ばれたヒュー・キャメロン(1835-1918)の「キンポウゲとヒナギク」は、3歳になる画家の娘を描いたもの。
作品は娘の手に残ったが、彼女は50年後肖像権を放棄、美術館に寄贈した。
画家が敬愛したミレイ風のタッチと色彩が素晴らしい。

「優しき目は常に変わらず」
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96)

前回も出品された作品で12年ぶりの再会となる。
モデルはベアトリス・バックストーンで、ミレイの娘が観劇した「幸運」に出演した子役である。
ミレイは絵のモデルになってくれるよう両親を説得し、以降彼女を3回(「コーラー・ヘリン」「シンデレラ」「スミレを持つ少女」)描いている。
「スミレを持つ少女」はその後、エリザベス・バレット・ブラウニングの詩から「優しき目は常に変わらず」に変えられた。
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ジョン・エヴァレット・ミレイは、ロンドンの王立アカデミー付属校に史上最年少の10歳で入学した神童だ。
1848年、ロセッティ、ホルマン・ハントらと共に「ラファエル前派兄弟団」を創設。
高名な美術批評家ラスキンの庇護の下、次々と話題作を発表した。
1855年にはラスキンと離婚したエフィ・グレイと結婚、子供をモデルにした感傷的な作品を発表し、肖像画家としての地位を確立した。