広場のある街

EOS KissDN

「この時間になると通りは若者でいっぱいです」と話すのはペルージャ大学で日本文化を教えるN氏。
イタリアの中央部ウンブリア州にあるペルージャは、人口15万人の中都市でエトルリア時代の城壁や石畳が続く街並みは古都の名にふさわしいたたずまい。
氏の言葉通り、若者たちは夕方6時過ぎの広場を埋め尽くしていた。
男子のグループは、さかんに女の子を夕食に誘い、いかにも楽しげだ。
ヨーロッパの中小都市には、古来「広場」という概念が強く存在する。
多くの場合、そこが街の中心で、道路も放射状に伸びている。
必然的に人が集まり、時間を忘れ、おしゃべりに興じる。
イタリア人はどの国の人間よりもよく歌い、食べ、愛すると言われるが、何よりも話すことを楽しんでいるようだ。
都市化が進む日本では近年さかんに「スローライフ」が言われるようになった。
スローライフ」とは、北イタリアで生まれた「スローフード」運動に由来する。
グローバルなファストフードではなく、地域毎に受け継いだ食生活を見直し、家族や友人と食事の時間を大切にしようという考え方だ。
しかし、わたしたちは往々にして「手作りパスタ」とか伝統食品のみに注目し、こうした食を実現する人間生活や習慣に注意を払わない。
スローライフ」の本場には表面の流行に左右されない、生活の底辺から食を支える習慣が受け継がれている。
広場に集う人々を見て、つくづくそう思った。