ベルギー王立美術館展

RICOH GRD

上野の国立西洋美術館で開催中のベルギー王立美術館展に行ってきた。
展示作品は16世紀から20世紀までの109点。(油彩70点、素描39点)
目玉は日本初公開となるピーテル・ブリューゲル(父)の「イカロスの墜落」だ。

イカロスの墜落」ピーテル・ブリューゲル〔父〕(?)(1525/30頃-1569)
世界に数十点しか現存しないピーテル・ブリューゲル(父)の作品中、古代神話を主題としたものはこの1点のみ。
しかし、真贋については昔から論争の種になってきた。
今回の展示もピーテル・ブリューゲル〔父〕(?)という表記を採用している。
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ミノス王に幽閉されたダイダロスは、蝋(ろう)を使って腕に鳥の羽を付け、鳥のように空を飛んで島を脱出しようと考えた。
しかし、息子イカロスは彼の忠告を聞かず、太陽に近づきすぎたため蝋が溶けて失速、海に落ちる。
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オウィディウスの詩集「転身物語」から採った題材だが、その構図は異例中の異例だ。
題名にもなったイカロスは、画面右下に海から足を出した姿で描かれている。
つまり墜落した瞬間を描いたものだが、父のダイダロスは描かれず、前景の登場人物たちは全く無関心なまま。
まさに20世紀のシュールレアリズムが乗り移ったかのような画面構成だ。


「大きな帽子を被ったアンリエット」アンリ・エヴェヌプール(1872-1899)
アンリ・エヴェヌプールは、わずか27歳で夭逝したフランス生まれのベルギー人画家。
ギュスターブ・モローに学び、マティスやルオーと同門だったらしいが、もう少し長生きしていれば…と思う逸材だ。


「踊るニンフ」コンスタン・モンタルド(1862-1944)
作品を見れば分かるとおり、装飾画を得意とした画家で、この絵もつや消しのメディウムで溶いた油彩、テンペラという凝った具材で描かれている。
モンタルドは1866年、パリでローマ賞を獲得、留学先のイタリアで見たフレスコ画に感銘を受け、現代風の復興を試みた。
そんな話を聞くと、何やら日本の有元利夫風である。
96年、ブリュッセルの美術アカデミーで教授に就任。
マグリットデルヴォーは教え子でもある。


「光の帝国」ルネ・マグリット(1898-1967)
マグリットの名ですぐに連想される代表作。
同じ主題を17点(油彩)も制作しており、私もいくつかはすでに見ている。
ブルーを基調とした色使いが、見る者に整然とした印象を与え、光と闇、昼と夜の同居が一定の秩序の中に表現されている。
人が絵画に興味を持つ過程で、最も初期の代表的作家がマグリットだという。
まぁ入門者にはとっつき易いということなんだろうが、個人的にとても好きな作品だ。