シャネル・スタイル

Canon LiDE 500F

19世紀のしがらみから激動の20世紀へ…
女性自立の歴史はシャネルのブランド確立と期を同じくする。
ガブリエル・シャネルは、まさに世界初のキャリアウーマンといえる存在だ。
私はシャネルの真骨頂は、あの香水瓶にあると思う。
香水の容器といえば、色塗りのガラスやラリックの装飾ガラスが一般的だった時代、あえて角形透明のシンプルきわまりないデザインを採用、世界を「あっ」と言わせた。
シンプル・イズ・ベストは、ファッションの世界でも鉄則だ。
窒息しそうなコルセットの束縛から女性を解放し、動きやすいファッションを提案したのは有名だが、大内順子は本書のあとがきで、喪服以外の黒い服、セーラーカラー、ショートカットのヘアスタイルなど、シャネルが女性ファッションに初めて取り入れたものをあげている。
保守に安住せず、革新を求めたからこそ生まれたアイデアなのだろう。
残した言葉にも含蓄がある。
「装いは知恵であり、美は武器である」
「仮装するのは愛らしい。仮装させられるのは悲しいことだ」
「女は女のために着飾る。競争するからだ。でも、男がいないのなら、その必要はない」
愛称“ココ”は、アルバイトの舞台で歌った「ココを見たのは誰?」からつけられたという。
死ぬ前日まで仕事を続けた希有のビジネス・ウーマン“ココ”の業績がしのばれる。
「シャネル・スタイル」(渡辺みどり著・文春文庫)