PLUTO4

Canon LiDE500F

浦沢直樹の「プルートゥ」単行本第4作が出た。
物語はいよいよ佳境に入り、アトムの生みの親、天馬博士が登場する。
「挫折、強い憎悪こそが電子頭脳を育てる。間違う頭脳こそが完璧なんだ」と語る天馬博士の言葉は、人間の世界にも当てはまるようだ。
完璧の原義は、中国の故事で璧(宝玉)を無事に返すという意味だ。

強国秦の昭王から、自分の城と璧を取り替えようという難題を受けた趙の惠文王は臣下の藺相如に解決を託す。
秦に出向いた相如は城を渡すつもりがない秦王の胸の内を悟り、「璧を返さないのなら、ここで割る」と脅す。
相如の剣幕に驚いた秦王は、気迫に押されて相如をそのまま帰国させた。
ここから「完璧而帰(壁をまっとうして帰る)」という故事が生まれた。

どら息子、どら娘の例えもあるが、恵まれ過ぎた環境からは堕落しか生まれない。
完璧とは、自ら不完全さを認め、常に前進し続ける姿勢とトレードオフの関係なのだろう。
満足や安住といったイメージが重なるだけに皮肉と言えば皮肉だ。