ZENPH Re-Performance Goldberg Variations

Canon LiDE500F

マーラーの9番とバッハのゴルトベルクは、我が家のクラシックCDの中で最も数が多い作品だろう。
それぞれの演奏に味わいがあり、新鮮な発見が随所にあることがお気に入りの理由だと思う。

ゴルトベルクというと米国ではグールド盤と相場は決まっているが、正直な話、私の好みでは無い。
ところが今年3月、グレン・グールド(1932〜1982)の生誕75年、没後25年を記念して妙なCD(SACD&CDハイブリッド)が発売された。

故人となった音楽家の未発表録音が出ることは珍しくもない。
ジミヘンなどは生前発表した量の何倍も「新譜」を発売しているからだ。(苦笑)
しかし、今回の記念盤は故人による正真正銘の新譜と言えるかも知れない。
なぜなら、定評ある55年録音を現代の技術でよみがえらせ、実際にピアノで演奏、それをDSD録音したからだ。

使用ピアノはYAMAHAのDisklavier Pro。(基本はCF3と同等だろう)
このピアノは、高精度MIDIファイルを家庭用Disklavierの10倍の精度で再生可能という。
解析用ソフトウェアは米国ノースカロライナに本拠を置くゼンフ・スタジオが開発した。

クラシックファンならお馴染みのピアノロールは、微妙なタッチやニュアンスまでは再現できない。
今回のプロジェクトは、過去の演奏録音をデジタル解析することで音楽的属性(音程、音符の長さ、打鍵・離鍵の速度など)を雑音と分離、結果をデジタル・エンコードしてMIDIファイルに書き込んでいる。
録音のためピアノを持ち込んだ場所も、グールドが放送用にゴルトベルクを演奏したトロントCBCスタジオという念の入りようだ。

実際に聴いてみると、やはり最新テクノロジーの賜物。
圧倒的に素晴らしい音質(もちろんStereo)と自然なタッチで奏でられるゴルトベルクに驚く。
雑音の多いオリジナルとは隔世の感があり、改めてグールドのゴルトベルクを見直した次第だ。
(まぁオリジナルにはオリジナルの味があるが…)


グレン・グールド/J.S.バッハ・ゴルトベルク変奏曲(ステレオ&バイノーラル・ステレオ)
SONY:SICC10043(SACD&CDハイブリッド仕様)
録音:2006年9月25、26日、トロントCBCスタジオ